この先の了平さんと委員長は完全にデキあがっています。
そこのところご注意よろしくお願いします。





























2008年9月14日(晴)

 拡声器にのった夕焼け小焼けのメロディが、カーテンで遮られた窓の向こうから聞こえてきた。
 了平にぴたりと身体を寄せて、うとうとと心地よい眠気に身を任せていた雲雀は、耳に届いたその音楽に片目をちらりと開ける。
 カーテンの布地ごし、数時間前に閉めた時と比較して、随分と弱くなった初秋の陽光を認めた。
「……む。もう5時か?」
 音楽が聞こえたのか、雲雀の気配に起こされたのか、雲雀の頭を抱きこんでいた了平が、もぞもぞと身じろぎして眠たげな声を出す。
 雲雀は、離すまいとするように了平の裸の胸に頭を摺り寄せた。
「そうだね」
 応える声はどこか気怠げで、少し掠れていた。
 家人が留守だという休日。昼前から了平を引きずり込んで、時間も忘れてひたすら互いの身体に溺れて、体力の尽きた後はぐったり重なるようにして眠りに吸い込まれて行った。
 まだ、じっとりとした水気が、肌の表面やシーツの間にわだかまっている。
 その感触にすら心地よさを覚えて、雲雀は了平の胸に指を滑らせ、くすくす笑いながら爪先に触れた小さな突起を円を描くように軽く引っ掻いた。
「こら、ヒバリ」
 小さく肩を揺らしてその感触をやりすごし、苦笑を滲ませて了平は雲雀の肩を軽く押した。
「すっかり寝入ってしまったな!そろそろ起きるか」
 それに抗うように更に身体を近寄せて、了平の指を絡めとりながら雲雀はふと思いついたように聞いた。
「ゆっくりしていけばいいよ。そうだ、今日ご飯どうするの」
「遅くなるかもとは言っておいた。お前は今日は一人だったな。付き合うぞ。出前でも取るか?」
「それもいいけど」
 悪戯っぽい光が目の奥に浮かんだ。囁くように問いかける。
「ねえ、一昨年とその前の年の今日。覚えてる?」
「む、去年の9月半ばなら入院していたが」
 了平は一瞬首を傾げて考え込んだが、すぐに思いついて楽しげに答えた。
「おお、そういえば、奇しくもお前と二人でメシを食いに行った日だな!」
「うん。どこか食べに行こうよ」
 肯き返して、雲雀は、2年前とまるきり同じ言葉を口に出した。
「折角だから賭けをしようか」
「よし、受けて立つぞ。手合わせか?」
「今日は手合わせって感じでもないな」
 大体つい先刻まで、殴り合いに勝るとも劣らない激しい全身運動を数時間にわたって繰り広げていたわけで、疲労感は全身に残ったままだ。
 無論、一旦互いに向き合って対峙すれば、その程度の疲労は問題にもならないはずだったが、密着した肌の温もりは、今すぐに切り捨てて忘れ去ってしまうには中々惜しい心地よさだった。
 絡めた指をそっとなぞってやる。了平はつないだその手をシーツの中から胸元まで引き上げ、感慨深げにじっと眺めていたが、やがて一人うなずくと雲雀に提案を出した。
「うむ、名案を思いついたぞ。指相撲はどうだ。今丁度繋いでるしな」
「へえ。いいよ」
 じゃれあうように何度か親指どうしを触れ合わせる。
 了平の指の爪をそっと撫で、関節の上から柔らかく押さえ込むと、それはするりと逃れて逆に雲雀の親指の上に掛かろうとしてきた。誘うように一瞬待ち、それから一気に指を引いて攻守を入れ替える。
「…む!」
「ふん」
 了平は、がばとベッドの中で跳ね起きて、どっかりと胡坐で座って姿勢を整えた。雲雀も片手をシーツについて身を起こす。
 数秒も経つ頃にはベッドの上に甘ったるい余韻など、シーツの乱れと穢れのほかに、かけらも残っていなかった。



一子さんの誕生日(9/14)お祝いでした。